大学物理

[徹底解説]金属と誘電体の静電誘導

president

[経歴]①国立大学工学部電気電子コースを早期卒業→②電験2種合格→③東京工業大学大学院工学院電気電子コースに進学→④電験1種と一陸技の取得を目指す

本記事では、金属と誘電体の静電誘導の違いを量子力学まで遡って解説していこうと思いますが、あまり情報量を詰め込みすぎても評価が落ちるだけなので、程々に解説します。

帯電物に引きつけられる荷電粒子

まず、静電誘導の根底にある概念としては、帯電した物質があれば荷電粒子が力を受けるということです。

下の図をご覧ください。

帯電物の力を受ける荷電粒子

金属導体を正に耐電させたとき、周りの荷電粒子に及ぼす影響を示した図になります。

これはクーロン力によって異符号の電荷は引きひけられる力、同符号の電荷は引き離される力が働くためです。

荷電粒子で考えた場合は単純です。しかし、帯電物を物質に近づける場合は少し複雑になります。

導体、半導体、絶縁体の量子力学的な話

金属は自由電子(原子核に囚われずに動き回れる電子)が存在します。

この自由電子のおかげで、金属は高い電気伝導性と熱伝導性を持ちます。

一方で、常温では半導体や誘電体は自由電子を持ちません。持たないといっても、金属に比べてはるかに少ないだけです。(高温になれば絶縁体も自由電子を持ちます。)

そもそも、なぜ、導体は自由電子があるのでしょうか?

これに対する回答は量子力学が握っていますが、これ以上は別の記事で解説します。

その為、この記事では量子力学の結論を用います。

例えば、炭素を取り上げましょう。

炭素原子(原子番号6)の電子配置

鉛筆の芯は炭素で出来ており、これは電気を通します。この理由は、価電子帯の電子(原子核に囚われた電子)が自由電子になりやすいからです。

炭素原子の電子が自由電子になるためには、隣の空席に移れば良いだけなので、簡単に伝導電子になることができます。

一方、同じ炭素でもダイヤモンドは絶縁体として知られています。

ダイヤモンドは、近接する4つの炭素原子と共有結合している為、下の図のように\(r_2\)の軌道上の電子の席が埋まってしまいます。

ダイヤモンドにおける炭素の電子配置

こうなった場合、価電子が自由電子になるためには、\(r_2\)の軌道から\(r_3\)の軌道にジャンプする為のエネルギーが必要です。

ダイヤモンドが電気を通しにくいのは、価電子が自由電子になりにくいからです。

この結果から、導体材料は単体や合金(化学結合をしないもの)である場合が多いという事と、

絶縁体はプラスチック、ガラス、ゴムなど、化合物や分子(結合して最外殻が電子で埋まったような物)が多いという事が読み取れます。

そして、絶縁性の高い材料は誘電率も高い傾向があります。

金属導体と絶縁体(誘電体)の区別がざっくり分かったところで、いよいよ静電誘導に関する話に入って行きます。

静電誘導

静電誘導にはざっくり2パターンあります。

金属導体の静電誘導と誘電体による静電誘導です。

これから簡単な図を用いて解説します。

誘電体の静電誘導

先に誘電体の静電誘導から説明します。

誘電体は何も電界をかけなければ次のような図になります。

誘電体

このように電界0では、電気双極子モーメントの向きはバラバラになります。

次に、下向きの電界をかけてみると、誘電体の内部には分極が生じ、次のように変化します。

外部電界による誘電体の分極

まず、原子核は容易に動く事が出来ず、原子核に囚われている価電子も動きづらい状況です。

外部電界がかけられると、誘電体内部では外部電界の影響を受けます。1個の電子の電荷量は\(-e\)なので、1個の電子が受ける力\(\overrightarrow{F}\)を式で書くと、

$$\overrightarrow{F}=-e\overrightarrow{E}$$

外部電界の方向とは逆向きに電子は移動し、電子の運動は円運動から縦長の楕円運動になります。

式を見ても分かるとおり、電界とは逆向きに電子が移動します。

金属導体の静電誘導

続いて、金属導体の静電誘導の話をします。

金属導体

金属導体の場合は上から下へ電界を加えると、価電粒子が自由電子になり、導体外側からの電界をシールドします。その為、誘電体のような分極は生じません。

外部電界をシールドする自由電子

その為、金属導体の内部電界は\(\overrightarrow{0}\)となります。

シールド

例えば、電気を通すために用いられるケーブルに電荷が帯電すると、同心円状に電界を発生します。

ケーブルに帯電する電荷
ケーブルから発生する電界

この電界\(\overrightarrow{E}\)は、感電の元になるので非常に危険です。このため電荷を逃がしてケーブルを帯電させない工夫が必要です。

その為、通常のケーブルには接地導体でケーブルを被覆します。そうすることによって、外部電荷を地面に逃がす事ができ、電界発生を抑制できます。

静電シールドによる電界発生防止措置

ケーブルから発生する電界が外に漏れなくなります。これを静電遮へいといい、この外側導体のことを静電シールドといいます。

  • この記事を書いた人

president

[経歴]①国立大学工学部電気電子コースを早期卒業→②電験2種合格→③東京工業大学大学院工学院電気電子コースに進学→④電験1種と一陸技の取得を目指す

-大学物理

Copyright © 2021 理数クラスター All Rights Reserved.