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マクスウェル方程式の物理的な意味とは

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[経歴]①国立大学工学部電気電子コースを早期卒業→②電験2種合格→③東京工業大学大学院工学院電気電子コースに進学→④電験1種と一陸技の取得を目指す

マクスウェル方程式は、電磁気学で得られた結論であり、多くの大学の書籍では最初にベクトル解析を記述し、静電界、電流界、静磁界へと話が展開していき、最後にマクスウェル方程式に行きつきます。

マクスウェル方程式を読み解くには、教科書の話の流れに従って方程式を読み解いていく事が重要です。

電束密度に関するガウスの法則

電磁気学のストーリーの最初はベクトル解析学の基礎から入ります。これは、電磁気学を勉強する前の準備体操だと思ってください。

そして、電磁界を解析しようと思うわけですが、この世界には電磁力を含めて以下の4つの力が働いているという事を忘れてはいけません。

  • 電磁力
  • 万有引力
  • 弱い力(古典電磁気学では無視する)
  • 強い力(古典電磁気学では無視する)

このうち、弱い力と強い力は、古典電磁気学では考えることはありません。問題となるのは万有引力ですが、これも無視できます。これは、万有引力とクーロン力を比べれば

クーロン力 ≫ 超えられない壁 ≫ 万有引力

となるからです。

1つの陽子\(1.67 \times 10^{-27} [kg]\)が1つの陽子から受ける力を計算してみます。距離を\(r\)とすると、

万有引力の場合は

$$|\overrightarrow{F_1}|=6.67\times 10^10\frac{(1.67\times 10^{-27})^2 }{r^2}=\frac{1.86\times 10^{-43}}{r^2} [N]$$

また、陽子の電荷が\(1.60 \times 10^{-19}\)[C]であることを利用すると、

クーロン力は

$$|\overrightarrow{F_2}|=9.00 \times 10^9 \frac{(1.60 \times 10^{-19})^2}{r^2}=\frac{ 2.30 \times 10^{-28}}{r^2}[N]$$

と求まります。

このように、粒子間の万有引力はクーロン力に比べてはるかに小さいので、電磁気学では電磁力のみを考えることができます。

磁界\(\overrightarrow{H}=0\)として、電界\(\overrightarrow{E}\)のみの空間を考えていく流れになります。


・この宇宙には電界による力、磁界による力、万有引力、弱い力、強い力があるが、電界による力のみを考えて、他の力は0とした空間を考えている


あとは、電界に関するストーリーが展開されて、式(1)に示す電束密度に関するガウスの法則が導出されます。

$$\nabla \cdot \overrightarrow{D}= \rho\tag{1}$$

この式は、電荷密度\(\rho\)から、電束密度\(\overrightarrow{D}\)が湧き出すことを示しています。

イメージ図ではこのようになります。

電束密度に関するガウスの法則

また、電束密度\(\overrightarrow{D}\)に対して、電界\(\overrightarrow{E}\)は、

$$\overrightarrow{D}=\varepsilon \overrightarrow{E}$$

という関係式(\(\varepsilon>0\))が成立するので、電荷は電界の湧き出し口であり、吸い込み口であるという結論が導き出されます。

ココがポイント

$$\nabla \cdot \overrightarrow{D}=\rho$$

は、電荷は電束(もしくは電界)の湧き出し口であり、吸い込み口であることを意味する


電荷量保存の法則

先ほどは、電界のみの空間を考えたのですが、次に考えるのは電荷の時間変化について考えます。

通常、電荷は時間が変化とともに移動します。先の考察では、電荷は止まったものとして考えましたが、動いていても式(1)は成立します。

そんな感じで議論を進めていくと、式(2)であらわされる電荷量保存の法則が導出されます。

$$\nabla \cdot \overrightarrow{j}= -\frac{\partial \rho}{\partial t}\tag{2}$$

となります。イメージ図にするとこのようになります。

 

電荷量保存の法則

これは、右辺を左辺に移項するとわかりやすいです。

$$\underbrace{\nabla \cdot \overrightarrow{j}}_{出ていく電流}+\underbrace{\frac{\partial \rho}{\partial t}}_{内部電荷の変化量}=0$$

つまり、電荷はいきなり消えたり、湧き出すことはないという事が言えます。

もっと厳密にいえば、負電荷と正電荷は同時に消滅したり生成されたりするという事を意味しています。

例えば、水素原子のイオン化では、

$$H → H^++e^-$$

となり、必ず変化の前と後で電荷量の合計が保存されています。

これが電荷量保存の法則です。

ココがポイント



$$\nabla \cdot \overrightarrow{j}=-\frac{\partial \rho}{\partial t}$$
電荷量保存の法則は、時間が経っても全体の電荷量は変化しないことを意味する。


アンペールの法則

電荷量が保存されるので、めでたしめでたし。

と思っていましたが、電流が流れたらアンペール力が発生しました。

 

アンペール力

アンペール力を皮切りに磁界の話に入ります。

順当に話を進めていくと、アンペールの法則式(3')が導出されます。

$$\nabla \times \overrightarrow{H}= \overrightarrow{j}\tag{3'}$$

この式の意味は定電流を流すとその周りに渦状に磁界が発生することを意味してます。

 

アンペールの法則

しかし、このアンペールの法則は時間によらず一定な電流でのみしか成立しません。なぜなら、電荷量保存の法則が考慮されていないからです。

これは、式(3')の両辺に発散を取ってあげるとわかります。任意のベクトル\(\overrightarrow{A}\)について\(\nabla \cdot \nabla \times \overrightarrow{A}=0\)が成立するので、

$$\nabla \cdot (\nabla \times \overrightarrow{H})=\nabla \cdot \overrightarrow{j}=0$$

となり、電荷量保存の法則\(\nabla \cdot \overrightarrow{j}=-\frac{\partial \rho}{\partial t}\)の結果と異なります。

よって、マクスウェルによって式(3')を右辺の発散が0になるように式を作り変えました。

それがこちらです。

$$\nabla \times \overrightarrow{H}=\overrightarrow{j}+\frac{\partial \overrightarrow{D}}{\partial t} \tag{3}$$

 

アンペール・マクスウェルの法則

ここで、導入された補正項\(\frac{\partial \overrightarrow{D}}{\partial t}\)は変位電流と呼ばれるもので、電磁波伝搬のメカニズムを説明する際に不可欠なものです。

このような議論を経て、アンペール・マクスウェル方程式が確立されました。

ココがポイント

$$\nabla \times \overrightarrow{H}=\overrightarrow{J}+\frac{\partial \overrightarrow{D}}{\partial t}$$
時間変化する電磁界では、電流と変位電流によって渦状磁界が生成される


磁束密度に関するガウスの法則

次に、磁束密度の発生源について考察していきます。

電界の発生源は電荷であることは電束密度のガウスの法則が示しました。

では、磁束の発生源はあるのでしょうか?

この疑問を解決するのが、磁束密度のガウスの法則です。

$$\nabla \cdot \overrightarrow{B}=0\tag{4}$$

これは、磁束密度の発生源(N極、S極だけの磁石)は存在しないことを意味します。図であらわすとこんな感じです。

 

磁束密度に関するガウスの法則

言い換えれば、磁束密度は必ずループ状になるということです。ここで、

$$\overrightarrow{B}=\mu \overrightarrow{H}$$

が成立していましたが、磁界\(\overrightarrow{H}\)はループ状にはならない(\(\nabla \cdot \overrightarrow{H}≠0\))ので注意してください。

具体例を挙げると、鉄、コバルト、ニッケルのような強磁性体(常温で強い磁化を持っている物質)などでは、透磁率\(\mu\)が方向によって異なる(異方性を持つ)ので、

\(\overrightarrow{B}\)と\(\overrightarrow{H}\)の向きは異なります。

線形代数学を学んだ人に向けてわかりやすくいえば、大体の場合では\(\mu\)はスカラーだけれども、異方性を持つものだと\(\mu\)は3×3の行列になるということです。

ココがポイント

$$\nabla \cdot \overrightarrow{B}=0$$

磁束密度\(\overrightarrow{B}\)は必ずループ状になる。


小学校の頃、理科の先生に「単極磁石を発見したらノーベル賞が取れる!」と豪語していた先生がいたのを思い出しました(笑)。

 

ファラデーの電磁誘導の法則

先のアンペールの式で、磁界と電流が結び付けられることはわかりました。

アンペール・マクスウェルの法則を電気回路として応用するためには情報量としては不十分です。

そこで、磁界と電圧の関係式を知る必要が出てきました。

$$\nabla \times \overrightarrow{E}=-\frac{\partial \overrightarrow{B}}{\partial t}\tag{5}$$

ファラデーの電磁誘導の法則です。この、ファラデーの電磁誘導の意味を直訳すると、渦状の電界を妨げる向きに磁束密度の変化が発生するという意味になります。

一見すると、式(5)には電圧が入ってきていないように思われます。そこで、ストークスの定理を用いて積分形に直してみると、

$$V=\oint_C \overrightarrow{E} \cdot ds= \int_S \frac{\partial \overrightarrow{B}}{\partial t} dS$$

となります。ここで、左辺=\(V\)とおきましたが、これはループ電圧です。そして、右辺は磁束密度の時間変化です。

このような過程を経て、ファラデーの法則は我々に馴染みの深い電気回路の公式になるというわけです。

 

ファラデーの電磁誘導の法則

また、ここで注意してほしい点は、ファラデーの電磁誘導の法則には電流が含まれていない点です。

あくまで、電界と磁束密度の関係式であるということです。

よくある勘違いが、

渦状の電界が発生(起電力が発生) ⇒ 電流が発生 ⇒ 電流を妨げる向きに磁束密度の変化が発生

というアプローチで覚えてしまうケースが結構多いですが、これは間違いです。この考え方だと、電磁波が空気(絶縁体)を介して伝搬する原理を理解できません。(導電率が高い程エネルギー損失が大きいことを理解できない。)

正しい考え方は、

渦状の電界が発生(起電力が発生) ⇒ 磁束密度の変化が発生

という流れで覚えることです。

ココがポイント


$$\nabla \times \overrightarrow{E}= -\frac{\partial \overrightarrow{B}}{\partial t}$$

渦状の電界を妨げる方向に磁束密度の変化が起きる


まとめーマクスウェル方程式ー

マクスウェル方程式は、電束密度に関するガウスの法則、アンペール・マクスウェルの法則、磁束密度に関するガウスの法則、ファラデーの電磁誘導の法則によって構成されています。

そして、アンペール・マクスウェル方程式の補正項は電荷量保存の法則が起源で来ているという事がわかりました。

$$\nabla \cdot \overrightarrow{D}= \rho\tag{1}$$

$$\nabla \cdot \overrightarrow{j}= -\frac{\partial \rho}{\partial t}\tag{2}$$

$$\nabla \times \overrightarrow{H}=\overrightarrow{j}+\frac{\partial \overrightarrow{D}}{\partial t} \tag{3}$$

$$\nabla \cdot \overrightarrow{B}=0\tag{4}$$

$$\nabla \times E=-\frac{\partial \overrightarrow{B}}{\partial t}\tag{5}$$

電磁波の速度は光の速度以下

そして、最後に電磁波の速度は光の速度以下に抑えられるという事を述べます。

電磁波の伝搬は、式(3)と式(5)によって発生します。今までの説明からすると、電磁波の速度が無限大のイメージを持たれるかもしれませんが、

しかし、そんな事はありません。

電磁波の速度にも限界があります。式(3)と式(5)を再渇します。

$$\nabla \times \overrightarrow{H}=\overrightarrow{j}+\frac{\partial \overrightarrow{D}}{\partial t} \tag{3}$$

$$\nabla \times E=-\frac{\partial \overrightarrow{B}}{\partial t}\tag{5}$$

光の速度に限界があるのは、右辺の時間微分の項\(\frac{\partial}{\partial t}\)が原因です。

時間微分の項は反応を遅らせる効果があります。

1回、1回の遅れは0に近くても、1万回、1億回も繰り返せば、そこそこ大きくなります。

そして、伝搬速度の限界が光の速度というわけです。

この辺は別の記事で説明します。

逆に言えば、式(1)や式(4)のような、ガウスの法則は時間的に遅れることなく、電界や磁界は発生するという事を主張しています。

最後に

マクスウェル方程式は極めて難解ですが、導出過程を覚えてしまえばどうってことはありません。

マクスウェル方程式の導出については、別の記事で解説します。

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