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電束密度と磁束密度の罠!!

president

[経歴]①国立大学工学部電気電子コースを早期卒業→②電験2種合格→③東京工業大学大学院工学院電気電子コースに進学→④電験1種と一陸技の取得を目指す

どうも、こんにちは。現在磁石の研究をしている電気電子系の大学生です。

電束密度の概念は、磁石に出てくる磁束密度の概念に近いので、一緒に説明した方が楽です。

電磁気学では、SI単位系であれば、電界\(\overrightarrow{E}\)と磁界\(\overrightarrow{H}\)を対応させます。

電束密度\(\overrightarrow{D}\)であれば、磁束密度\(\overrightarrow{B}\)と対応します。

こいつらは本当に概念がよく似ているので、セットで説明します。

電束密度・磁束密度

電束密度・磁束密度の定義に注意!!

電束密度は\(\overrightarrow{D} [C/m^2]\)は、電界\(\overrightarrow{E} [V/m]\)を用いて表すと、

$$\overrightarrow{D}=\varepsilon \overrightarrow{E}\tag{1}$$

という風に教科書には書いていますが、実はこれは含みを持たせた表現で、そのまま解釈をするとまずいです。(\(\varepsilon \)は誘電率←諸悪の根源)

磁束密度の定義についても、\(\overrightarrow{B} [Wb/m^2]\)は、磁界\(\overrightarrow{H} [A/m]\)を用いて表すと、

$$\overrightarrow{D}=\mu \overrightarrow{H}\tag{2}$$

と書かれており、同様にそのまま解釈するとまずいです。(\(\mu\)は透磁率←諸悪の根源)

普通に式(1)を解釈すると、

電束密度\(\overrightarrow{D}\)は、電界\(\overrightarrow{E}\)のスカラー倍だから電界に比例して、向きも一緒なんだろうなぁというのが読み取れますが、この解釈は間違いです。

どういう事か説明します。

誘電率\(\varepsilon\)は電界の大きさ\(|\overrightarrow{E}|\)によって変わる

つまり、式(1)を書き換えると、

$$\overrightarrow{D}=\varepsilon (|\overrightarrow{E}|) \overrightarrow{E}\tag{1}$$

こうなるというのが私の主張です。

この理由としては、強磁性体や強誘電体が持つモーメントが影響しています。

電束密度(磁束密度)と電界(磁界)の関係

このグラフは磁石の世界では初期磁化曲線(ヒステリシスループではない)と呼ばれるグラフを描いたものになります。

これは、誘電率の高い強誘電体や透磁率の高い強磁性体に起こる現象です。下の図にメカニズムを示します。

モーメントの磁化

これは、磁気モーメントの磁化過程を示したものになります。作りたての磁石や消磁した後の磁石は①のようにモーメントがランダムに配向しています。

少しずつ右に磁界をかけると、モーメントは平均的には磁界の向きにそろい始めます。

そして、完全にそろうと、磁気モーメント\(\overrightarrow{m}\)はこれ以上上昇しないので、分極ベクトル\(\overrightarrow{M}\)も上がらずに一定となります。

これが、強磁性体の磁束密度が磁界に対して綺麗な比例関係を描かない理由になります。強誘電体も似たような原理だと思うので、私は強磁性体の磁化過程を当てはめて覚えています。

誘電率、透磁率は向きによって異なる

一般的に物質は異方性(方向によって物性値が異なる性質)を持っています。特に、強誘電体や強磁性体はこの異方性が顕著に表れます。

異方性が現れる原因はいくつかあるのでいくつか紹介します。

  • 物質の形状(形状異方性)
  • 結晶構造(結晶異方性)
  • 強磁性体の成膜時の外部磁界によって強制的に得られる異方性(誘導異方性)

形状異方性の分かりやすい例としては、下のような薄板で考えると分かりやすいです。

\(z\)方向に薄い板

この板は、\(z\)方向に対して薄いので、\(z\)方向には磁化されやすいです。しかし、\(x、y\)方向に対しては長いので、\(x、y\)方向には磁化されません。この場合の磁界計算は、物質内部で反磁界を定義することで、行う事ができます。

逆に異方性がない形状は、完全な球体になります。

球はどの角度から見ても、反磁界係数が\(\frac{1}{3}\)なので、形状異方性はありません。しかし、球体にしたとしても、結晶の異方性はあります。

結晶の具体例は、面心立方格子構造(fcc)、体心立方格子構造(bcc)、六方最密充填構造(hcp)などがあります。

常温で強磁性体を示す物質として、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、※ガドリニウムがありますので、これを用いて説明します。

強磁性体(ニッケル、鉄、コバルト)の結晶構造

物質や状態によって結晶構造は決まっています。上の図はその一例になります。例えばニッケルは、結晶の対角線方向[1,1,1]に磁化しやすくて、\(x,y,z\)軸方向[1,0,0]に磁化しにくいです。鉄はニッケルの逆で、\(x,y,z\)軸方向[1,0,0]に磁化しやすく、対角線方向[1,1,1]方向に磁化しにくいです。コバルトは、c軸方向(縦方向)に磁化しやすいことが知られています。

このように、金属で球を作ったとしても結晶による異方性が残るということです。

これを数式で記述する場合は、少し工夫が要ります。

磁束密度\(\overrightarrow{B}=(B_x,B_y,B_z)\)、磁界\(\overrightarrow{H}=(H_x,H_y,H_z)\)とおけば、

$$\begin{pmatrix}B_x \\ B_y \\ B_z\end{pmatrix}=\overline{\overline \mu} \begin{pmatrix}H_x \\ H_y \\ H_z \end{pmatrix}$$

という風に記述されます。\(\overline {\overline \mu}\)は異方性を考えて

$$\overline{\overline \mu}=\begin{pmatrix} \mu_{xx} &\mu_{xy} &\mu_{xz}\\ \mu_{yx}&\mu_{yy}&\mu_{yz}\\ \mu_{zx}&\mu_{zy} &\mu_{zz} \end{pmatrix}$$

とおけば、

$$\begin{pmatrix}B_x \\ B_y \\ B_z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \mu_{xx} &\mu_{xy} &\mu_{xz}\\ \mu_{yx}&\mu_{yy}&\mu_{yz}\\ \mu_{zx}&\mu_{zy} &\mu_{zz} \end{pmatrix}\begin{pmatrix}H_x \\ H_y \\ H_z \end{pmatrix}$$

という風に書きます。ちなみに、スカラーが0階のテンソル、ベクトルが1階のテンソル、\(\overline {\overline \mu}\)みたいな行列は2階のテンソルと呼ばれます。

強誘電体の場合も似たような感じで、

$$\begin{pmatrix}D_x \\ D_y \\ D_z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \varepsilon_{xx} &\varepsilon_{xy} &\varepsilon_{xz}\\ \varepsilon_{yx}&\varepsilon_{yy}&\varepsilon_{yz}\\ \varepsilon_{zx}&\varepsilon_{zy} &\varepsilon_{zz} \end{pmatrix}\begin{pmatrix}E_x \\ E_y \\ E_z \end{pmatrix}$$

とかけます。必ずしも誘電率や透磁率がスカラーになるわけではないということです。

結論

実際問題として、強磁性体はニッケル、鉄、コバルト、ガドリニウムしかありません。なので、普通の空気中や適当な物体に関しては透磁率は線形であり、異方性をもたないスカラーである思えば良いと思います。強誘電体もそこまで多いわけではありません。私の知っている材料はチタン酸バリウム(\(BaTiO_3\))ですが、これは人工で作られた物ですので、自然界では異方性や非線形性は考えなくて良いと思います。

強磁性体がなぜ少ないのか?とかどうやったら磁性が発現するのか?という疑問は別の記事で解説します。(する予定です。)

最後までご覧くださり誠にありがとうございました。

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